私は趣味の一つである釣りによく行きます。
もっぱら海釣り専門なのですが
私は船に弱いので防波堤とか磯でやります。
その日も 朝早くから支度をして出かけました。
そこは険しい崖になっていて、人があまりこないため
絶好の穴場で、私のお気に入りの場所でした。
夕方になり、そろそろ引き上げようと思っていた頃
静かだった海面がいきなり光を発してしぶきをあげ始めた。
はじめは何事が起こったのかと思い、海面を見ていると
どうやらイカの大群である事に気づいた。
釣れるどうか分からなかったけど、
とりあえず糸を垂らしてみた。
すると、すぐに食いついてきた。
リールを巻いているとかなりの力で引っ張られる。
イカにしてはやけに強い力で引っ張るので、
改めて海面をのぞいてみた。
それは、イカなんかじゃありませんでした。
うねうねとうごめく それは
何百、何千という人の手でした。
海面をもがきながら私の投げ入れた糸に向かって集まっている。
ますます、引っ張る力が強くなっていき
思わず釣り竿を離してしまった。
海中に沈んでいく竿にどっと手がからみついていく。
後で知ったことだが、その崖は
自殺の名所として有名な場所だったらしい。
私も、もう少しで海の中に引きずり込まれるところでした。
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かなり前の話だが、ある男が中古車を買った。
当時の人気車で、かなりの値がつくはずの車が、
安く売られていたのだ。
事故車に違いないと思い、
あちこち確認したがバンパーとボンネットの交換以外、
機関部や足回りに修復の痕跡は見当たらなかったので、
彼は修復歴ありの車であることを承知して代金を支払った。
購入数週間。
夜、彼が一人で車を走らせていると、
目の前に子供が飛び出してきた。
その後も、何度か子供の飛び出しに見舞われる内、
彼はある事に気付いた。
毎回、同じ子供。
白い服を着た小学生くらいの女の子。
彼はあちこちの車屋を訪ねて車を売ろうとしたが
店側の都合が悪かったり、
やたら気に入らない店主にぶつかったりして、
売却交渉はまとまらなかった。
おそらく、周辺の車屋の間では
知られた車だったのだろうと、後にはそう思えたが、
その頃はそんな簡単な事も分からず、
彼は車を手放す機会を逃しつづけた。
やがて彼は本当に子供を轢いてしまった。
死ぬ事はなかったものの、相手は姉の子供。
近所の解体屋へ持ち込む決意をしたが、
その途中でエンジンが止まり、始動できなくなった。
レッカーを手配し、ようやくの解体屋まで運び込んだ。
解体屋が、持ち込まれた人気車をただスクラップにするわけがない。
ひどい事故で持ち込まれた車ではないので、
使える部品はいくらでもある。
彼のものだった車からは色々な物が剥ぎ取られ、
中身は抜かれ、空っぽになり、
飛び出してきた女の子の思い出もろとも、
あちこちへ運ばれていった。
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